この本は、著者、重富昭夫さんが、編著した「チャブ屋」について本牧の歴史と一緒に書いた書籍である。
「チャブ屋について、一番詳しく書かれた本!」 チャブ屋を記憶している複数の方のインタビューも書かれていた。
チャブ屋をイメージする代表的な曲、淡谷のり子さんの「別れのブルース」の歌詞から始まるところが、一気に昔の本牧に誘ってくれる。チャブ屋の生い立ちから描かれていて「チャブ屋って結局何?」と今となっては横浜いや本牧の住民さえ知らない言葉を紐解いてくれている。また、違う角度では、お客様を連れてくるリキシャマンの話や重富さん自身の親類・知人も当時チャブ屋と関係している人物が登場するのが面白い。更には、チャブ屋が登場する貴重な書籍の紹介や写真など情報満載である。一番は、当時を知っている複数の人にインタビューをして、楽しいエピソードまで掲載されている。本牧の歴史についても書かれており、とても分かりやすく解説されている。
特に印象深いのは、重富さん自ら今の本牧まで足を運び感想を述べている。ただ、すでに本牧には、「チャブ屋」の名残りなど一切なく、マイカル本牧という新しい街に変わった複雑な気持ちが伝わってくる。しかし、メリケン波止場の見える(チャブ屋の雰囲気)場所を探し探索し続ける様子に感動した。
「あとがき」で、重富さんは、こう綴っている。
「チャブ屋って何?と聞かれたら。戦前まで横浜の本牧にあった、外人相手のあいまい宿だよ。」とお茶を濁してきた。
そこから興味を持ち、ここまで調べて書籍に残すとは、頭が下がる思いである。また、私も「チャブ屋」に興味を持って色々と調べたがなかなか資料が見つけられず、重富さんの書籍に出会った時は、感動し感謝しました。本サイトでも、とても参考にさせて頂いた参考書であります。
目 次
ハマの歴史、チャブ屋誕生秘話
- 一夜の恋を歌った「別れのブルース」
- 横浜オリジナル言葉”チャブ屋”
- 外国人遊歩道に出現した享楽の場
- 本牧の歴史と”わたしの本牧”と
- チャブ屋発展の陰の立役者リキシャマン
- 洋風建築と断髪と、脂粉の香り
- 軍靴の音とは別世界の街
- 突貫小僧と本牧小港の女たち
- メリケンお浜の数奇な生涯
- 夢は跡形もなく、新本牧の街づくり
- 小港から大丸谷へと嬌声は響く
文学に描かれたチャブ屋風俗
- 長谷川伸が描いた明治のチャブ屋
- 北林透馬が描いた昭和のチャブ屋
- 推理小説に登場する大正のチャブ屋
- 横浜時代の谷崎潤一郎
古き良き時代のチャブ屋体験
- 80歳のプレイボーイ 美女を語る
- 伊勢佐木町の虎造、チャブ屋を追想
- 女の懐で稼いだリキシャマン倉田
- 証言・倉田治三郎の生涯とその周辺
- 時代の風潮が生んだハマの遊び
- 男と女が織り成すハマの異国情緒
- 華やかりしチャブ屋の面影を追って
- 遊郭に似ていた大丸谷のチャブ屋
- 女たちが楽しんだ”伊勢ぶら”
- メリケン波止場の灯が見える
あとがき
重富昭夫(1995)『日本のムーランルージュ横浜「チャブ屋」物語』 センチュリー.
コメント
>apollo さん
マニアには、入手したい一冊ですね!中古の方がプレミアついて高いかも知れません。新刊あれば定価なのですね。HMV情報ありがとうございました。
この本、何故かアマゾンで倍くらいの値段で売られてますが、HMVで取り寄せしたら定価で買えました。