マイカルグループの総帥・小林敏峯ニチイ社長は、社長に就任すると同時に、ニチイグループとして、新しい時代に向け、新しい考え方を示すYM-CAL(ワイエム・キャル)=「Young & Young Mind Casual Amenity Life」哲学を発表した。
「これまでの大量消費社会のリーダー役を果たしてきたのは、ヤング、すなわち団塊の世代の人たちです。しかし、彼らは中年の世代に入り、かわって、団塊の世代の子どもたちであるヤングが主役に躍りでてきている。だから、われわれは常に5年先、10年先の主力客層であるヤングの感性、感覚をとらえた商品、あるいはサービスを開発していかなければならない。
しかし、ヤングをターゲットとした店づくりをしても団塊の世代が離れてしまってはなにもならない。彼らも、常に若々しく健康でありたいと願っている。ここにヤングマインドという言葉が生まれてきたのです。
ヤングやヤングマインドを持った人たちに支持されるのは、肩を張らず、気楽で自由な文化であり、価格でいえば、誰でも買える値ごろということになります。ここでカジュアルという言葉が生まれます。
そして、人々は誰でも心身ともに快適で楽しい人生をめざしている、すなわちアメニティライフを求めているのです。
われわれは、若々しく健康で美しい人生、知的なライフスタイルを楽しむというのが、これらの行動のニーズになると結論を出して、YM-CALという考え方を打ち出したわけです。」
更に、次の理由から”ニチイグループ”の名を捨て、新しいグループ名を採用した。
「現在、成長している各グループ内企業は、ニチイを核母体として成長してきた。しかしニチイは、発生の歴史からみて、一般的な評価は、スーパー、量販店としてみられがちであり、グループ内企業もまた、(ニチイ=○×社=スーパー)と短絡的に評価されてしまう。これを払拭するため、仮にニチイのイメージを変更するとなると、膨大な資金と時間がかかる。そこで、むしろニチイから離れ、イメージの強いグループ名をつくることにより、ニチイ本体でもまた、グループイメージのアップに向かって努力するべきだという結論に達したのです」
YM-CALという社内的な理念があったが、これをそのままグループ名として使用するにはあまりにも語呂が悪く、一般的な知名度として浸透させるには「時間がかかりすぎるのでは」といった懸念があった。
そこで起用されたのが、アルゼンチン生まれのエミリオ・アンバスだった。エミリオは、”創造の天才”の異名を持つ世界的な建築家で、デザイン(工業、グラフィック)分野においても世界に幅広い影響力を持つユニークなクリエーターであり、これまでに、建築、デザインの両部門において世界的な賞に何度か輝いている。
エミリオと、ニチイとの出会いは建築、設計を通してのものだったというが、小林社長はエミリオを訪ね、まず企業ポリシーから説明した。
つまり、創業時における三つの経営理念を説明するとともに、その延長線上にある経営戦略としての、ヤング&ヤングマインド・カジュアル・アメニティ・ライフの理念を、誰にでも理解できるようなキャッチフレーズにまとめること。それをさらに、アイキャッチャーとしてデザイン化することを依頼したのだ。
「三つの経営理念」
・企業の使命感に徹す良心的結合
・革新的不断の進歩
・大衆文化向上に寄与する良品廉価政策
グループアイデンティティともいうべき、キャッチフレーズはすぐにできた。従来までの呼称だった”YM-CAL”(ワイ・エム・キャル)と、頭の二文字部分だけが入れ替わっただけのものだ。いかにもイージーに思えるかもしれないが、それなりの理由はあった。
まず、ワイ・エム・キャルでは三音節になり発音しづらい。それに”YMCA”と混同されやすい。それを一文字入れ替えてMYCALとするだけで、二音節となり、欧米人にも発音しやすくなる。マイは「私の」という意味につながり、親しみやすい語感があり、カルはカルフォルニアを連想させて明るい印象がある。
しかも、各頭文字に込められたニチイのコンセプトが一つも損なわれなくてすむことになる。シンボルマークは三案出たというが、小林はためらわずに、現在、われわれがよく目にするマイカルのGROUP IDENTIFICATIONに決めた。絵柄は周知のように稜線上に根を下した四本の樹木から構成されている。大地と樹木はマイカルグループの思想と業容を表現したものであり、四本の樹木は、グループにおけるマーケティングの基軸となる子ども、10代、30代、50代の四世代にわたる感性区分をイメージしたものである。また四本の樹木は恵まれた日本の四季を表現し、同時に見る人をして人生そのものを回願し、未来への夢をもつようにもイメージしている。
シンボルマークについて
「マイカルグループの核は発生の歴史からみて、ニチイです。シンボルマークに描かれた大樹はニチイを表わし、この大樹が芽を萌き、果実を実らせ、さらに大樹となっていく。ここから発生した感性マーケティングが、他の三本の幼樹、青樹へと波及させ、さらに大樹に戻っていき、感性に磨きがかかる。四本の樹はそれぞれ四季も象徴している。一番の大樹は、ニチイを表現すると同時に風雪の四季に耐えた”冬”をイメージしている。この大樹は豊穣な実を結実させ、三本の若木へと伝播させていく、その中心が、夏をイメージする20~30代の若木であることはもちろんのことです」
YM-CALに端を発したニチイの企業戦略はまず、ニチイの換骨奪胎から始まった。つまり、ニチイが、従来の量販店ではなく、量販店の良さに、専門性と感度の高い店をドッキングさせる店づくりをすることによって、今までにない専販店づくりをめざすことから始まる。これはとりも直さず”脱スーパー”を志向した若々しい感性に満ち溢れた店舗づくりを意味していた。
1988年3月、ニチイでは「MYCAL」宣言を行った。
「マイカル本牧」という名前は、工事が始まった頃、突然のようにして決まった。それまでの仮称は、「本牧ポート・ヒル」であった。
マイカルグループの総帥・小林敏峯ニチイ社長が、同社のコンセプトであるマイカルを是非使おうと言いだしたのだ。
1989年4月 「マイカル本牧」がオープンする。
2001年9月 経営破綻し、会社更生法の適用を受ける。
2011年3月 株式会社マイカルは、”ジャスコ”を展開するイオンリテールに吸収合併され「マイカル本牧」は、消滅し「イオン本牧」となった。
”ヤング”って言葉を使いすぎだろ!笑
それに、M Y C A L は「”YMCA”と混同されやすい。」って・・・
ちなみに、西條秀樹の「YOUNG MAN (Y.M.C.A.)」は、1979年2月21日にリリースされた28枚目のシングルである。
すでに、マイカル本牧のオープンは、10年経過してるし、”ヤング”が死語となり、”マイカル”も消滅とは・・・
関係ないけど、ナポレオン党とグループ&アイがTBS「ヤング720」で放送されたのは、1966年12月10日である。
「参考」
サティ=ヤングマインド志向の強い団塊の世代にターゲットを絞り込んだ新業態で、Select any time for yourself(どんな時でも、自分のために選び吟味する)のイニシャルをとって命名された。
ビブレ=フランス語のVIVRE(生きる)をヒントにネーミングされ、ヤング層をターゲットに”売場の専門家”プロ販売員による接客販売を行う専販店のことである。
参考:山下剛(1990) 『MYCALグループ 時代の感性を読む経営』 講談社
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